猫ブログ - カテゴリ1
本の中の猫探し。 大佛次郎「猫のいる日々」より。
暖かくなったら猫探しに歩き回ろうと思うものの、
春にはあと少しの待ち時間が必要かな。
寒い間は本で猫を探して集めることにしている。
そんな中で、古本屋でふと巡り合ったのは大佛次郎の「猫のいる日々」。
猫にまつわるエッセイ、短編小説、童話が集められたもので、
「本の中で猫を探す」というより、これは最初から猫だらけなのだ。
ページを繰れば、次から次へと猫の話・・・。
歴史小説の印象が強かった大作家が、無類の猫好きと知っていれば、
作品も進んで読み、大学の近くにあった記念館にも足繁く訪れていただろうに・・・と今更ながらに後悔する。
さて、本の中にこんな一節がある。
「そっと放任して置いてやれば、猫はいよいよ猫らしく美しくなって、無言の愛情を飼い主に寄せて来るのである。多少なり、こうした沈黙の美しさが感じられるひとならば、
猫を愛さぬわけはないと思うのである。」(昭和51年)
珠玉の言葉であると思う。
この本の中には、氏の童話の代表作「スイッチョ猫」も納められている。
愛らしく温かで趣深い作品で印象に残った。
けれど、何故か特別に興味深かったのは「八百屋の猫」の短いエッセイ。
それはパリの八百屋の白猫の話。
歩道に悠然と昼寝を決め込む丸々と太った白猫は、
『航空便で送ってもらったタタミイワシを鼻先に出すと目を丸くして喜んでむさぼり食った。
そして、猫に話しかける。
「こんなにいいものがある世界とは今まで知らなかったろう、どうだ?」
話しかけたのは日本語でパリの猫には通じたかどうか。』
些細な出来事ながら、猫好きには「ふむふむ。」と納得、大いに共感する。
これが昭和36年のことだから、なんとも面白い。